イントロダクション





 一本の高価な剣が、その森の中に隠されているという言い伝えがある。たくさんの冒険家や欲深い人たちがその森の中へ飲み込まれてゆき、生きた人間にしろ死んだ人間にしろ、ただの一人も帰ってきたためしがないことは、隠された宝剣について多くの憶測を呼んだ。

 血に飢えた戦士たちの間では、この剣はどんなものでも真っ二つにすることができる超金属で作られた剣だという事になっている。どんなものでも、砥石でも鉄のたががはめられた大樽でも、頑丈な鋼鉄の鎧でも、ついでにその威力を見せ付けられた敵の戦意まで真っ二つにしてしまう剣だと語られている。
 たくさんの戦士たちが強くなるために、森の中に姿を消した。期待通り強くなって戻ってきた者はいない。

 多くの芸術家や派手好きの商人たちの間では、この剣は非常に高価な宝玉で飾られた宝剣ということになっている。刃や柄は両手いっぱいにすくってもこぼれ落ちてしまうほどの宝石で飾り付けられ、美しく繊細な彫刻が施され、さらにその刀身には、光にかざすと空を飛ぶコンドルの姿が浮かび上がる細工がしてあるのだと語られている。
 こういった美しい宝剣の噂は、冒険に不慣れな彼らに危険な森の中へ入っていく勇気を与えるのに充分だった。しかし彼らの友人や家族たちは、それが勇気と呼ぶには少しばかり無謀すぎた事を徐々に認めざるを得なくなった。

 一部の怪しげな考えの持ち主たちの間では、この剣は呪われた剣ということになっている。他の多くの呪われた剣の逸話と同じように、手を離せば手元に戻ってきて、かと言って持ちっぱなしにしていると持ち主を苦しめて殺してしまうというわけである。
 しかしこういった噂話は、スリルを求める冒険家たちをかえって勇み立たせただけであった。

 これらの多くの噂話は、数え切れないほどの舌の上でもてあそばれているうちに多くのバリエーションが生まれ、神秘の森に封印された宝剣は、みるみるうちに魅力的な偶像へと変貌していった。


 これは、そんな偶像を追って森の中へと姿を消した、5人の冒険家、3人の兵士、1人の老人の物語である。




 “クスクス”は、一回のプレイ時間が15分程の短編アドベンチャーです。

 二通りのエンディングが用意されており、どちらのエンディングが見られるかは途中現れる1つもしくは2つの選択肢での決定に左右されます。

 呪いの剣について書きましたが、シナリオ、システムにオカルト要素は一切ありません。
 その辺を期待してプレイするとがっかりさせられることでしょう。